私たち日本人が普通の会話の中で使っている
言葉の中に深い日本人の心が隠されています。
その一つが「いってきます」「ただいま」です。
今日も多くの家で
「いってきます」
「いってらっしゃい」
この言葉が交わされたことでしょう。
そして夕方になると
「ただいま」
「おかえりなさい」
その言葉であふれることでしょう。
日本ならあたりまえのこの会話も
諸外国ではほとんど使われない会話です。
「いってきます」=「行くけど帰って来る」の意味
「いってらっしゃい」=「必ず帰ってきてね」の意味
私たち日本人は約束して一日を始めるのです。
そして約束を守った言葉が
「ただいま」=「約束を守って今、帰ってきたよ」
「お帰りなさい」=「帰ってきてくれてありがとう」
私たちが普通に使っている言葉の中に
優しい約束の思いが詰まっているのです。
帰って来る約束だから「いってきます」です。
帰って来られない場合は「いきます」になります。
特攻隊員が
「行きます」
と言って飛び立った話を聞いたときに胸が痛くなりました。
もう帰ってこない、だから「いってきます」と言えなかったのです。
もうひとつ「いってきます」と言って飛び立った特攻隊員もいました。
鹿児島の知覧に陸軍の特攻基地がありました。
そこに多くの若者が母と慕った鳥濱トメさんがいます。
鳥濱トメさんは富屋食堂を経営してたくさんの特攻隊員を
見送った人です。
鳥濱トメさんのエピソードの中に「蛍帰る」があります。
引用記事 → http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog253.html
表戸の隙間から、一匹の大きな源氏蛍が光る尾を引きながら、
すーと店に入ってきたのであった。
娘たちはほとんど同時に気がついた。
お母さーん、宮川さんよ。
宮川さんが帰ってきたのよ。
宮川さんとは鳥濱トメさんの富屋食堂に通っていた宮川軍曹のことです。
彼が特攻に飛び立つ前に富屋食堂により
鳥濱トミさんに次の言葉を残します。
小母(おば)ちゃん、おれ、心残りのことはなんにもないけれど、
死んだらまた小母ちゃんのところに帰ってきたい。
そうだ、この蛍だ。おれ、この蛍になって帰ってくるよ。
こんなことがあったので、鳥濱トミさんの娘たちは
蛍を見て「宮川さんが帰ってきたよ」と声をあげたのです。
「いってきます」
この言葉をつぶやいて蛍になっても帰ってきたかった気持ち
日本人ならよくわかると思います。
帰る場所、そして迎える人がいる場所
その場所を持っている人はしあわせでしょう。
そして多くの日本人が「いってきます」といって
出かけるのだから「帰る場所」をすでに持っているということです。
多くの人はしあわせなのです。あとはそれに気付くだけです。
「いってきます」の言葉に秘められた
日本人の心(魂)に多くの人に気付いて欲しいと思っています。